KEEP ON 日本一心 | 七つの海をバタフライ -吉川晃司ブログ-

七つの海をバタフライ -吉川晃司ブログ-

異彩を放ちまくりながらも逞しく泳ぎ続ける吉川晃司。
全てのロックレジスタンスどもへ バーボンを傾けながら・・・。

人間の強さは忘れる事だ。
辛い出来事も哀しみもいつか忘れさせてくれるモノに出会う。
石巻市に降り立ち、沿岸を見て回ると、そこかしこに新しく舗装された道路や、仮設住宅が見える。
国道45号線の道路標識はほとんどが流され、壊れてしまったという。
宮城の中心部である仙台市内や都市部においてはさほど変わりなく繁栄を取り戻し、復興を遂げたかのようではある。
だが、未だ津波の影響を受けて、終わらない工事を続けるショベルカーや、舗装工事で砂の巻き上がる荒れ果てた剥き出しの大地や、投げ出された船、車や建物が残る。
『うみはコワイ でもキレイ』
宿泊先には、全国各地からの復興支援メッセージが掲げられていた。
その中にあったのがこの一文だ。幼い少女の書いたであろう一文が、僕たちが日常忘れてしまっている自然への畏怖と敬愛を象徴している。
石巻市だけでは無い。
未だ完全な復興に遠い東北各地では、震災はただの過去では無い。

人間の弱さは忘れる事だ。
時間が立てばあの日々はきっと過去になる。だけど、喪った人々や街は二度と戻らない。
あんなに恐ろしいと感じた津波やその被害も、僕たちは忘れていく。
テレビや新聞でも報道されていく機会は減っている。安全な日常が確保された僕たちにはまるで過去の出来事のようだが、そうではない。
其処に暮らす人々には、今も復興は続くのだ。それも何年も何十年もかけて。
久し振りに見た津波の映像の怖さに僕は目を背けたくなった。恐ろしい速度で何もかも飲み込むその姿に。
そして、喪われた人々や街を偲ぶ慰霊碑や残された建造物に言葉を喪った。

日常は忙しなく過ぎる。しかし心を亡くしてはいけない。
あの中に、誰かにとっての家族が、恋人が、友が、仲間がいたと想像するだけで胸が張り裂けそうになる。
もしかしたら僕らにとって大事な人になるかもしれない、そんな人たちが、たくさんの日常が、いっぺんに飲み込まれてしまった。
誰もが、大きな無力感を感じただろう。
たくさんのミュージシャンやエンターテイメントに携わる人間が自分たちに出来る事を模索した。しかし個に出来る事には限りがある。
ならば、と掲げられた旗が同志諸君と【日本一心】の言葉であった。
僕たちの【日本一心】は一生をかけて『考え続ける事』と『行動する事』だ。

この日、残酷なくらいに美しい、青い青い空と海を前に僕は誓って来た。
また何度もこの場所にやって来る事を。けしてあの日を忘れないようにする事を。
それまでが【KEEP ON 日本一心】。僕たちの回答。

災害防止庁舎